PROJECT STORY 01

「シュガーバターサンドの木」
新規製造ライン導入プロジェクト

効率的な安定生産を実現し、世の中に驚きと感動を届けるために。世の中に驚きと感動を届けるために。

穀物の旨みそのままのシリアル生地に、ブレンドバターとシュガーをまぶし焼き上げた「シュガーバターサンドの木」は、お土産用のお菓子としても幅広い世代の人々に愛されている。そして、アフターコロナでの人の移動の復活を見越し、生産力を増強するために新規製造ラインとして立ち上げられたのが「Hライン」だ。新設備導入における課題や苦労、そして、この経験を通じて得られた視点について、4名のプロジェクトメンバーが語る。

MEMBER

※掲載内容は、インタビュー当時のものです。

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アフターコロナの需要拡大を見据え、ラインを新設。

新型コロナウイルス流行による人の移動制限。それは、グレープストーンにも大きな影響を及ぼした。旅行や出張などのお土産として人気の高いお菓子の需要が減衰し、それに伴い生産量も減少したのだった。しかし、移動制限は永久に続くものではない。制限解除によるお菓子の需要急増を見据えて、施策を打つ必要があった。
「急激に需要が拡大した場合、製造量が追い付かないというリスクがありました。人員を大きく増やさなくとも、十分な製造量を賄える体制を作るため、お土産として特に人気の高いシュガーバターサンドの木の新たなラインを立ち上げることになりました。これがHラインプロジェクトのはじまりです」。
そう振り返るのは、エンジニアのA.Kだ。シュガーバターサンドの木の生産工程は、生地を焼く「焼成」、生地にチョコレートを充填する「チョコ」、できあがった商品をパッケージに包む「包装」という3つに分けられる。従来は各工程で人が目視で検品していたが、その作業を画像検知機で自動化することで、生産性を向上させることを目指した。ただ、一筋縄ではいかなかった。A.Kは語る。
「各工程で流れてくる商品を様々な角度からカメラで撮影し、設定した良品の条件に反していないかを自動で検査する機械を導入しました。しかし、当初は誤検知が多く、映り込んだ影も不良と判断してしまう状態でした。品質を優先しながらも、できる限り製造ロスを減らすための調整を何度も繰り返しましたね」。

Hラインプロジェクトでは、各工程の製造機械も一新した。焼成工程では生地出し用の成形機が2台から4台に増設され、1台あたり1分間で約200枚の製造量だったところ、約230枚の生地を生産できるようになった。また、従来人の手で行っていた生地の厚みの調整も自動化。製造量は大幅に増加したが、生地の大きさにばらつきが発生するという問題が生じた。焼成担当のT.Kは振り返る。
「小麦粉と水からなる生地の原料は、少しの条件の差で状態が変化します。生産量が向上したことにより、成形機に原料が入っている時間が短くなったことで今までと温度などの条件が変わり、最初は生地が大きくなったり、縮んだり反ったりと散々な状態でした。理想的な生地の状態をキープするために、適切な水分量や温度を試行錯誤して、安定して製造できる条件を見極めました」。
見た目にも美しくおいしいシュガーバターサンドの木を市場に届けるため、トライアンドエラーを繰り返す日々が続いた。しかし、T.Kは笑顔を見せる。
「今回のプロジェクトでは各メンバーに部下がつけられ、部下とともにテストや調整を行いました。この経験は、私はもちろん部下にとっても大きな経験値になったと思います。お互いに励ましあいながら取り組むことで、壁も乗り越えられましたね」。

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生産性4倍を目指して。

焼成工程でできあがった生地にチョコレートを充填するために、生地を一定間隔で整列させる。ここにも壁が立ちはだかった。チョコ工程担当のT.Nは語る。
「あるべき位置から1ミリでもずれると、正しくチョコが打てなくなります。整列させるためのガイドの幅や高さの調整がうまくいかず、ボロボロに砕けた生地を捨てるだけの毎日が過ぎ、とても悔しかったことを覚えています。技術開発部や機械メーカーと連携し、何度も微調整すること1か月。ついに完成しました」。
しかし、ここからが本番だ。チョコレートを溶解するケトルは、3時間で約200キロの製造量だったところ、2倍の400キロを同じ時間で製造できるようになった。また、ツヤやくちどけを出すためのテンパリングは、1時間半から30分に短縮。充填機の数も増えたことで、数々の調整を迫られた。T.Nは言う。
「チョコレートは非常に繊細で、たった0.2度の温度変化で状態が変わります。各機械の配管の温度やメッシュの位置についてあらゆるパターンを試して記録し、課題の原因を追究することで、目指すべきチョコレートの状態に仕上げていきましたね」。

試行錯誤し、理想の品質のチョコレートを完成させた。さらに、従来のラインであれば、不良品の生地にもチョコを打ってしまう仕様だったが、Hラインでは不良品を自動検知して良品のみに充填するためロスが生まれなくなった。しかし、その先の包装工程でも、課題は山積していた。
「Hラインは時間当たり24,000個製造できると聞いていましたが、プロジェクト開始当初は8,000個からのスタートでした。包装工程に流れてくるまでのクーラートンネルに製品がつまってしまうなど、課題点を見つけ出しては解消することを続けました」。
そう振り返るのは、包装工程担当のK.Tだ。焼成、チョコ、包装の各工程は全て一つのラインでつながっており、課題も前工程の影響を大きく受けてしまう。それぞれの担当者が責任を持って解決を目指し、奮闘することで、全体最適化が果たされるのだ。また、SDGsに配慮した変更もあった。Hラインではパッケージ包装がパックからフィルムに変更されている。その狙いについて、K.Tは言う。
「フィルムに変更されたことで、プラスチックごみの削減につながり、SDGsにも貢献できました。これに伴いフィルム交換の方法や機械の操作方法が変更になったので、機械メーカーの方から説明を聞き、オペレーターに分かりやすく伝えられるよう工夫しました」。
こうして各工程の地道な調整を積み重ねた結果、大幅な生産性向上を達成した。最終的には生産性4倍を目指し、今後もさらなる改善が重ねられていく。

03

驚きと感動のお菓子を、安定生産するために。

Hラインプロジェクトは、各メンバーにとって大きな刺激となった。焼成担当のT.Kは笑顔で語る。
「正直、すごく疲れましたね(笑)。しかし生産性は莫大に上がり、頑張った結果が得られたことに達成感があります。今回のプロジェクトでは機械メーカーとも連携したことで、仕事の視野が広がったと感じています。今後はさらに協力会社との関係性を深めて、スムーズな新規ライン立ち上げを実現したいです」。
チョコ工程は季節ごとに求められるチョコレートの品質が異なるため、引き続き調整が必要になるが、一段落したことにT.Nは安堵する。
「初めてHラインでできあがった製品を見た時は、本当に気持ちがよかったですね。視界が明るくなったと感じました。プロジェクトでは全く未知のことに挑戦し続けたので、この経験を後輩たちにもしてもらいたいと思いました。これまで自分が担当していた業務も後輩たちにチャレンジさせて、原因や背景まで伝えた上で、仕事の視野を広げられるようサポートしていきたいです」。

包装担当のK.Tは、新たな目標を見据えて前を向く。
「Hラインは2台の包装機の間に人やモノが集まっているという配置なのですが、今後は環境面をさらに改善して、より働きやすい現場を作っていきたいです。また、後輩たちやオペレーターに私の持つ知識を共有して、包装工程の仕事の質を底上げするのも目標です。そのためにも、分かりやすい作業手順書を作成したり、積極的に声がけをしたりしていきたいですね」。
Hラインの新設備導入や調整に携わったA.Kは、プロジェクト全体を俯瞰して見ることで、事前に想定されうる課題を検討する力を向上させたいと熱く語った。そうすることにより、発生する課題への対処がスムーズになり、立ち上げまでの期間をさらに短縮できると考えるからだ。そして、A.Kはこれからの夢を教えてくれた。
「グレープストーンのお菓子は、今まで世の中になかったような見た目やコンセプトのものが企画されています。お客様に驚きと感動を届けるお菓子を、どのようにして機械で安定生産させられるかが、私たち技術者の腕の見せ所だと思います。お客様に“手作りではなく、まさか工場で作られているなんて”とびっくりしていただけるような設備を導入し、世の中に幸せを届けたいですね」。
シュガーバターサンドの木の製造体制は、ブラッシュアップされ続けていく。