PROJECT STORY 02

横浜限定「チューリップローズ ショコラティエ」 開発プロジェクト

愛し継がれる新商品を目指し、妥協を許さずお客様の元へ。

ベルギー産のハイカカオを使用した、ピュアなチョコレートの風味が人々を魅了する「チューリップローズ ショコラティエ」。TOKYOチューリップローズ そごう横浜店の新規オープンに伴いリリースされた新商品だ。美麗かつ優雅な商品ではあるが、その開発の裏には数えきれない努力があった。4名のプロジェクトメンバーが、ショコラティエの開発にかけた想いを語り尽くす。

MEMBER

※掲載内容は、インタビュー当時のものです。

01

試行錯誤を繰り返し、完成した特別な味。

「チューリップローズはブランド立ち上げにも携わったので、我が子のように思い入れがあるんです。新商品を絶対に成功させてやるぞ!と奮い立ちましたね」。
2023年7月14日のTOKYOチューリップローズ そごう横浜店新規オープンに伴い、新商品開発プロジェクトを任された企画開発部のA.Tは、笑顔でそう振り返った。プロジェクトが始動したのは2023年1月。約3年ぶりとなるチューリップローズの新店舗出店ということで、強いフックとなる新たな味わいの商品を開発することとなった。白羽の矢が立ったのは、本格的なチョコレート味。シーズンごとにバリエーション豊かな味を展開できるフレキシビリティが適していた。新商品は「チューリップローズ ショコラティエ(以下、ショコラティエ)」と名付けられた。
まずぶつかったのは、濃厚なチョコレートの味わいを表現するという壁だ。A.Tは語る。
「開発当初は強い味わいが出ませんでした。そこで原料に着目し、チョコレートの原料となるカカオマスを使用したところ、濃厚な風味に仕上げることができました。10種類のカカオマスを使い分けて試作し、金井理仁(カナイ マサヒト)シェフの監修のもと、理想の味を追求していきましたね」。

もう一つの壁があった。夏場にチョコレートが溶けてしまうという課題だ。7月に発売される商品のため、耐熱性は必須条件。A.Tはテストキッチンであらゆる素材や配合を試し、いくつかのパターンを作り上げ、桶川工場のテスト生産へ持ち込んだ。チューリップローズラインサブリーダーのK.Aは当時を思い出す。
「第一印象として、黒いチョコレートをメインに押し出す商品の製造は難しそうだと思いましたね。通常のチューリップローズで使用しているホワイトチョコレートに比べて繊細で、わずかな温度変化で粘度が変わるため、耐熱性だけでなくショコラクリームの形をきれいに維持するための考慮も必要なのです」。
テスト生産ではA.Tが作成した配合パターンに応じて、K.Aが材料を仕込み機械に充填。完成したクリームの状態に合わせて配合や温度を調節し、A.Tと話し合いながらテスト生産を繰り返した。K.Aは当時をこう語る。
「通常は1、2回で終わるテスト生産なのですが、ショコラティエは最終的に4回のテストを実施しました。3回目のテストを実施する時に、かなり苦戦しているなと感じたのが正直なところです。しかし、お客様に満足していただける商品に仕上げるため、一切の妥協を許しませんでした」。
A.Tも、その想いは一緒だった。
「テストキッチンで決めた配合を、そのまま工場用にスケールアップしてもうまくいかないことがあります。ラボスケールに適した配合や温度を見つけ出すのには苦労しました。お客様に喜んでいただくため。その一心で、K.Aさんと共闘しました」。
試行錯誤の末ついに耐熱性をクリアし、ベルギー産のハイカカオを使用した“ショコラ界のスタンダード・ナンバー”ショコラティエが完成した。

02

新商品の魅力を、余すことなくお客様へ届けるために。

パリのギャラリー。これが新店舗のブランドコンセプトだ。ショコラティエのパッケージは、爽やかで目を引くフレンチグリーンに、パリの画廊にある絵画のようなタッチの花瓶が描かれる。高級感を演出するため、エンボス加工した立体的な缶にデザインを施した。パッケージデザインを担当したY.Hは、細部にまで徹底的にこだわったと言う。
「エンボス加工のデザインは初挑戦でした。わずかな高低差でデザインの印象は大きく変わるので、3Dデータでイメージを掴みながら、ディテールをどこまで再現できるか調整を重ねました」。
花瓶の立体感を表現するため、エンボス加工で面取り。背景はマットニスで光沢を抑え、花瓶には光沢感のあるニスを使用することで、質感の差を出し華やかさを演出した。新店舗出店プロジェクトに携わったことで、視野が広がったとY.Hは語る。
「お菓子や店舗ができる一連の流れを経験できたことで、パッケージデザインを広い視点から考えられるようになりました。タイトなスケジュールでの進行でしたが、各メンバーがブランド愛を持ち、妥協せず仕事に向き合う姿勢に刺激を受けましたね」。

そうして完成したショコラティエが、ついにそごう横浜店に並ぶこととなる。販売責任者のK.Mは、ショコラティエの第一印象を笑顔で振り返った。
「とにかくパッケージデザインがかわいいなと思いました。実際、デザインのかわいさに惹かれて来店されるお客様は多かったですし、エンボス加工のボコボコとした部分を触って“すごい!”と喜んでくださる方もたくさんいました」。
マーケティングの販売戦略を参考にし、ショコラティエは販売時間を限定した新たな販売手法を採用した。客足が最も増えるタイミングに絞り、「時間限定のショコラティエを販売中」とお客様へアプローチ。神奈川県で初出店ということもあり注目度は高く、ショコラティエ目当てのお客様が大行列をなすほどの賑わいを見せ、その行列がさらなるお客様を呼び込む結果となった。 オープン前には、金井シェフによる販売員に向けた研修も実施した。ショコラティエの魅力を余すことなく伝えるため、販売員は2日間にわたりロールプレイングでスキルを磨いた。K.Mは語る。
「絶対に成功させたかったので、販売員のメンバーにもその想いを共有しました。皆でひたすらお客様にお声がけして、ショコラティエのこだわりをお伝えしましたね。チューリップローズファンのお客様から、かわいさに惹かれて立ち寄られたお客様まで、皆様から高い評価をいただくことができました」。
オープン当初に用意していた350缶は見事完売。今では、同価格帯の商品の中で極めて高い売上個数を誇るほどの人気商品となった。

03

ブランドの価値を高め、末永く愛される商品へ。

約半年にわたり展開されたショコラティエプロジェクトは、各メンバーに大きな成長をもたらした。販売員として初めてチューリップローズに携わったK.Mは、グレープストーンの強みを改めて実感したと語る。
「A.Tさんや金井シェフを筆頭に、チューリップローズのブランドに関わる方々のブランド愛の強さに驚かされました。今回新たに参入したメンバーも、その想いを責任もって引き継がなければと思うほど、愛で巻き込む力がすごかったです。それだけ誇りを持てるお菓子づくりをしているのが当社の強みだと思います。お菓子の美味しさや魅力を伝えられるのは販売現場なので、そごう横浜店で長く愛されるブランドになるよう、これからも頑張りたいですね」。
チューリップローズは、製造部門の活躍なくしては語れない。日々安定的に生産し、お客様の元にお届けするのはもちろんのこと、さらに上のレベルを目指すとK.Aは前を見据える。
「今回のプロジェクトでは、お客様に喜んでいただけるクオリティを求めて、調整やテストを繰り返すことの大切さを学びました。今後も現状のクオリティに満足することなく、お客様により美味しいと感じていただき、見た目もきれいだと思っていただけるように、生産性と品質面の改善を続けていきます。そして、より価値の高いブランドになるよう製造側からバックアップしたいです」。
パッケージデザインを担当したY.Hは、新たな夢を抱いた。
「お菓子の開発から販売までの一連の工程に触れたことで、コンセプトから提案できるデザイナーになれるよう成長したいです。商品とパッケージ、店舗全体をまとめてブランディングすることで、お客様にブランドの世界観をお届けできればと思います」。

ブランド愛を胸にプロジェクトをまとめあげたA.Tは、チューリップローズはクオリティ面でも技術面でも、他社が真似できない唯一無二の商品だと考えている。目標は、グレープストーンの代表商品である東京ばな奈のように、長く愛されるブランドに育てることだ。
「チューリップローズはお客様に愛していただける商品であることは間違いありません。一方で、ブランド立ち上げから約5年が過ぎ、環境に合わせて、ブランドの世界観をもっとブラッシュアップしていく時期かなとも思っています。今以上にお客様に愛していただけるような、伝わりやすい表現を模索していきたいですね」。

チューリップローズの進化は、これからも続く。